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もしゝ?

電話越しに答えを待ち、
いつものように 名を名乗る
「こちらは夕焼け新聞社――、
 編集部、百音志郎でございます」

私のほかに誰もいない。
受話器の向こう側には、
虫の声も聴こえない。
夜の事務所に、独りきり――

答える声はまだ、ない。
受話器越しに念を押す。

「こちら夕焼け新聞社、」

その、私の声に、
たったひと言――、


「もし?」

たったひと言――。
この私の声で、
「こちら、夕焼け新聞社?」

受話器越しに念を押す。
答える声は、
まだ、ない――、

「夜の事務所に独りきり、
 虫の声も聴こえまい?
 受話器の向こう側には、
 
 あんたの他に、
 誰もいない。」

「編集部?
陌夐浹繧繝でございます
 こちらが夕焼け新聞社?」

いつものように
名を名乗り、
電話越しに答えを待ちつづける



作詞/作曲:権兵衛る