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なぜ歌った

もしも、夜の明かりが
すべて消えたなら、
誰が、貴方の歌を唄うのだろう、ね?

何故、わたしは音楽など
選んでしまったのだろう?
何も自力で歌えやしない
君が、いなければ――、

貴方が言うから
私、答えた
人は、なぜ歌うのか?
なぜ、歌ったのか?
世界最古の歌、セイキロスの墓標
「決して死なない、想い出の証を刻む」
――だって、さ。

嗚呼、
証、遺したって
湧かし興したって
今までの死者の、
名前 憶えちゃいないなあ――、

セイキロスの歌の
永遠の想い出さえ
ただ、
何故か知ってた
だけだからな

嗚呼、
証、遺せたって
その血遺したって
いつか死ぬ貴方を
ただ見送るしかない

何故、なぜ、わたしは
なぜ歌った?

何度でも、何度でも、
何度でも生まれ変われるなら
「己の声」で
全てを歌い尽くせる?

――だろうか?

嗚呼、
証、遺したって
湧かし興したって
今までの歌を、
全部 憶えちゃいないなあ――、
セイキロスの歌の
永遠の想い出さえ
今、貴方が思い出させただけで――、

嗚呼、
証、遺したって
燈灯したって
街明かりさえ、
夜が明ければ消える

終わらない夢の墓場と
共に歌う夢を、
貴方だけ、喩え何処か
別の場所で
眠りに就くのだとしても――、



作詞/作曲:権兵衛る