贈り物でも、 なんでもない
青い 無地のネクタイが
声も出ないほど 絡み付いて、
「たすけて」 とも言えなくて。
いつか くたばる生命なら、
ここで血反吐を 撒いて
真っ黒に染めて やれば、
と 悔いながら
車庫へと 運ばれてゆく
「……俺ごと?」
「窓、開かないかな?」
胸の奥で狼狽えて。
ぬるい汗を 垂らしながら、
真っ黒な 瞳が拡がって―、
暗闇に 慣れてゆく 視界に、
車窓に、 見慣れぬ景色。
きっと、 誰かにとって
「ここ」は、現場という名の 戦場。
終点を越えた 終着点、
死に損なって ここにいるだけ―
早まれば 俺を殺した罪を
きっと、 誰かが負うのだろうね?
終点を越えた その先で―
「終わりは無いから お休みよ」と、
走馬灯が 俺を手招くけど、
ごめん、 「死にやしないよ」
お気に入りでも 何でもない
青い無地のネクタイを
緩め解いた と、思ったのに
気が付きゃ すでに あくる日。
どうせ何時かは 死んでゆくのに―
咽び泣くような 辞世の句に
今なお、 「めでたし、 めでたし。」を、
不眠不休で 夢見ている―。
「まど、 あかないかな」
胸の奥の静けさに
吹き抜ける つめたい風と
真っ青な 空が、いまにも― 掴めそうで。
終点を越えた 終着点
死に損なって ここにいるだけ。
―そうやって、 俺を殺した罪を
何に着せようと いうのだろう?
お気に入りでも 贈り物でも
何でも無くたって、
この首に 巻かれているのは それは、
「シルクの縄」
……じゃない!
終点を越えた 終着点、
死に損なって ここにいるだけ―
それでも 俺を生かした すべてに
何の罪も 有りはしないだろう?
終点を越えた 日常に―
「終わりは無いから おわりだよ」
と、 幻聴は いまも止まない けれど、
「明日も 生きてゆくだろう。」